介護経営情報報告

はじめに

今回は、厚生労働省老健局から発行された最新の介護保険情報をご紹介します。


制度の趣旨

全世代対応型の持続可能な社会保障制度の構築

現代社会では、少子高齢化の進行に伴い、社会保障制度の持続可能性が重要な課題となっています。特に介護分野では、2040年を見据えた人口動態の変化、生産年齢人口の減少、介護現場における人材不足、新興感染症など、さまざまな課題に対処する必要があります。このような背景から、介護サービス事業者の経営情報を収集し、データベース化する制度が創設されました。

  • 目的1: 介護事業経営実態調査を補完し、定期的な経営情報の収集を行うことで、迅速かつ的確な支援策を講じることができます。
  • 目的2: 物価上昇や災害、新興感染症などに対応するための経営情報を提供し、事業者が適切な経営判断を行えるよう支援します。

情報の透明化と公表

収集した経営情報を属性ごとにグルーピングし、国民に分かりやすい形で公表することを目指しています。これにより、介護サービスの利用者が適切な選択を行えるよう支援し、介護サービスの質の向上に寄与します。

  • 目的1: 介護サービス利用者に対して、透明性の高い情報提供を行い、サービス選択の参考にしていただけます。
  • 目的2: 介護サービス事業者の経営状況を公表することで、競争力を高め、サービスの質の向上を促進します。

介護サービス事業者からの報告の実施方法

報告の対象

介護サービス事業者は、原則として全ての事業者が報告義務を負います。ただし、特定の基準に該当する事業者については報告を免除されます。具体的には、以下の基準に該当する事業者が対象外となります。

  1. 介護サービスに係る費用の支給の対象となるサービスの対価が100万円以下の者
  2. 災害その他の理由で正当な理由がある者

これにより、報告負担が過度に重くならないよう配慮されています。

報告の単位

報告は原則として、介護サービス事業所・施設単位で行います。しかし、事業所・施設ごとの会計区分を行っていない場合などのやむを得ない場合には、法人単位での報告も認められます。これにより、事業者の実情に応じた柔軟な対応が可能となります。

報告の対象となるサービス

以下の介護サービスを提供する事業所・施設が報告の対象となります。

  • 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション
  • 通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護
  • 特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護
  • 認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 複合型サービス、居宅介護支援、介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス、介護医療院サービス
  • 介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護、介護予防特定施設入居者生活介護
  • 介護予防福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具販売、介護予防認知症対応型通所介護
  • 介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護

この広範なサービスを対象とすることで、包括的な経営情報の収集と分析が可能となります。


報告内容

介護サービス事業者は、以下の内容を報告します。

1. 基本情報

事業所または施設の名称、所在地、法人等の名称、法人番号、介護事業所番号、提供するサービスの種類など、基本的な情報を報告します。これにより、事業者の基礎的な情報を把握することができます。

2. 収益および費用の内容

介護事業の経営状況を把握するために、以下の収益および費用に関する詳細な情報を報告します。

  • 介護事業収益:
    • 施設介護料収益、居宅介護料収益、居宅介護支援介護料収益、保険外収益など、具体的な収益項目を報告します。これにより、収入の構造を明確にします。
  • 介護事業費用:
    • 給与費、業務委託費、減価償却費、水道光熱費、その他費用(材料費、給食材料費、研修費、本部費、車両費、控除対象外消費税等負担額など)。これにより、コスト構造を把握します。
  • 事業外収益および費用:
    • 受取利息配当金、運営費補助金収益、施設整備補助金収益、寄付金、借入金利息など、事業外の収益および費用も報告します。
  • 特別収益および費用:
    • 特別収益、特別費用など、通常の経営活動外で発生する収益および費用を報告します。
  • 法人税、住民税および事業税負担額:
    • 法人税、住民税および事業税の負担額を報告します。

これらの情報を通じて、事業者の財務状況を詳細に把握することができます。

3. 職員の職種別人数その他の人員に関する事項

職員の配置状況を把握するために、以下の情報を報告します。

  • 管理者、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、准看護師、介護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師・あん摩マッサージ師、生活相談員・支援相談員、福祉用具専門相談員、栄養士・管理栄養士、調理員、事務職員、その他の職員、介護支援専門員・計画作成担当者、訪問介護のサービス提供責任者の人数(常勤・非常勤別)および給与・賞与情報。

これにより、職員の配置と待遇を詳細に把握することができます。

4. その他必要な事項

以下の追加情報を報告します。

  • 複数の介護サービス事業の有無
  • 介護サービス事業以外の事業(医療・障害福祉サービス)の有無
  • 医療における事業収益
  • 延べ在院者数、外来患者数
  • 障害福祉サービスにおける事業収益、延べ利用者数

これにより、事業者の全体的な業務内容と規模を把握することができます。


報告の方法と期限

介護サービス事業者から都道府県知事への報告は、電磁的方法を利用して行います。具体的には、以下の手順で報告を行います。

報告の方法

介護サービス事業者は、報告を電磁的方法(インターネットを利用した報告システム)で行うことが求められます。これにより、報告の効率化と正確性が向上します。

報告の期限

報告の期限は、各会計年度終了後3か月以内です。ただし、初年度(令和6年度)の報告期限は特例として令和6年度末までとされています。この特例措置により、初年度の報告が円滑に行えるよう配慮されています。


データの利用と公開

収集された経営情報は、厚生労働省が整備するデータベースに基づき、分析結果が公表されます。具体的な利用方法は以下の通りです。

データの分析と公開

収集した経営情報は、厚生労働省によってデータベース化され、定期的に分析されます。分析結果は、介護サービスの質の向上や政策の策定に役立てられます。また、国民に対しても分かりやすい形で公表され、介護サービスの選択に役立てられます。

都道府県知事の役割

都道府県知事は、管轄する事業者の情報を基に地域内の介護サービスの状況を把握し、情報を公開する努力義務があります。この義務を果たすことで、地域住民に対して透明性の高い情報提供が可能となります。


情報の安全管理

報告された情報の取り扱いには、以下のような適切な措置が求められます。

  • 情報漏えいや滅失の防止: 報告された情報が外部に漏えいしたり、紛失することがないよう、適切なセキュリティ対策を講じます。
  • 不正利用の防止: 報告された情報を不正な目的に利用することのないよう、厳格な管理体制を整備します。

これにより、報告された情報の安全性と信頼性を確保します。


お問い合わせ先

厚生労働省 老健局 認知症施策・地域介護推進課
高齢者支援課・老人保健課
TEL: 03-5253-1111(内線 3979)
FAX: 03-3503-7894


 

 

20240802 表紙 (都道府県+関係団体)vol. (wam.go.jp)