保育士処遇改善の新たな一歩:処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲの一本化とは?
2024年12月に行われた「子ども・子育て支援等分科会」で、保育士の処遇改善に関わる重要なテーマが議論されました。その中心にあったのが、「処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲの一本化」です。
処遇改善等加算とは?
処遇改善等加算は、保育士をはじめとする職員の給与改善を目的とした加算制度です。これまで以下の3つの区分が設けられていました:
- 処遇改善等加算Ⅰ:職員全体を対象に、平均経験年数やキャリアパス構築に応じて加算率(最大19%)を設定。
- 処遇改善等加算Ⅱ:中堅職員や専門リーダーを対象に、技能や経験に応じて月額4万円または5千円の加算。
- 処遇改善等加算Ⅲ:職員全体を対象に、賃上げ効果が継続する取り組みを行うことを条件に、月額9千円を加算。
これらの制度は、保育の現場で働く人々の給与を引き上げ、キャリア形成を支援することを目的としてきました。しかし、手続きの煩雑さや制度の複雑さが課題として指摘されていました。
一本化の背景
処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲが一本化される背景には、以下の課題がありました:
- 手続きの煩雑さ:各加算ごとに異なる申請要件や計画書の提出が求められ、施設や地方公共団体の事務負担が大きかった。
- 制度の複雑さ:趣旨や対象者、加算額の算定方法がそれぞれ異なり、現場での運用が難しい。
- 現場での使いづらさ:書類作成や確認業務に時間を取られ、現場の負担が増加。
こうした課題を解消するため、2024年に策定された「こども大綱」では、申請書類の簡素化や統一化を通じて、事業者や地方公共団体の負担軽減を目指す方針が示されました。
一本化の具体的な改善内容
処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲの一本化により、以下のような改善が行われます:
- 手続きの簡素化
- 賃金改善計画書の提出を原則廃止し、代わりに「賃金改善を行う旨の誓約書」を提出。
- 必要に応じて計画書を提出する仕組みを維持しつつも、事務負担を大幅に削減。
- 加算区分の統一
- 新たに「処遇改善等加算(仮称)」として一本化。
- 「区分1(基礎分)」、「区分2(賃金改善分)」、「区分3(質の向上分)」の3つの区分を設ける。
- 処遇改善等加算Ⅰ(賃金改善要件分)とⅢを統合して「区分2」、Ⅱを「区分3」として再編。
- 配分方法の柔軟化
- 職位や職責に応じた賃金体系を整備し、施設ごとの裁量を広げる。
- 施設全体の教育・保育の質向上を重視した配分が可能に。
- 賃金改善の確認方法の見直し
- 賃金改善の確認方法を統一化し、加算総額での確認を採用。
- 子どもの減少や収入の減少がある場合でも、柔軟な対応が可能な特例措置を導入。
今後のスケジュール
処遇改善等加算の一本化は、2025年度(令和7年度)からの本格的な実施が予定されています。それに向けて、加算の趣旨や要件、配分ルールの具体的な整理が進められる予定です。
まとめ
処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲの一本化は、保育の現場を支える職員の処遇を改善するための大きな一歩です。手続きの簡素化や制度の統一化により、現場の負担軽減が期待されています。
保育士や施設運営者にとって、今後の制度変更に関する情報をしっかりとキャッチアップすることが重要です。