短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

平成28年10月から短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が実施され、特定適用事業所で働く短時間労働者は、健康保険・厚生年金保険(社会保険)の加入対象となっています。

1.特定適用事業所の概要

特定適用事業所とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が101人以上となることが見込まれる企業等のことです。

厚生年金保険の被保険者数の総数の考え方

法人事業所の場合は、同一法人格に属する(法人番号が同一である)すべての適用事業所の被保険者数の総数
個人事業所の場合は、適用事業所単位の被保険者数

企業規模要件

特定適用事業所に該当する適用事業所の企業規模は段階的に拡大され、令和6年10月からはさらに厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。改正内容の詳細は「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」をご覧ください。

手続き

特定適用事業所の手続きは、「特定適用事業所該当・不該当の手続き」をご覧ください。

特定適用事業所該当・不該当の手続き

(1)該当したとき

適用事業所で使用される厚生年金保険の被保険者の総数が、直近1年のうち6カ月以上100人を超える場合、特定適用事業所に該当します。日本年金機構において、直近11カ月のうち5カ月100人を超えたことが確認できた場合は、対象の適用事業所に対して、「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」を送付します(法人事業所の場合は、同一の法人番号を有するすべての適用事業所に対してお知らせを送付します)。

ア.法人事業所の場合

同一の法人番号を有するすべての適用事業所を代表する本店または主たる事業所から、特定適用事業所該当届の届出をお願いします。

イ.個人事業所の場合

各適用事業所から、特定適用事業所該当届を提出することになります。

  • 特定適用事業所該当にともない、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合は、各適用事業所がその者にかかる被保険者資格取得届を提出する必要があります(健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者資格取得届については、健康保険組合へ届け出ることになります)。
  • 特定適用事業所に該当したにもかかわらず、特定適用事業所該当届を届け出なかった場合は、対象の適用事業所を特定適用事業所に該当したものとして「特定適用事業所該当通知書」を送付します。

(2)不該当を申し出るとき

使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時100人を超えなくなった場合であっても、引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われます。ただし、使用される被保険者の4分の3以上の同意を得て、特定適用事業所不該当届を提出した場合は、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることとなります。
※被保険者資格が適用されている短時間労働者がいる場合は、短時間労働者にかかる被保険者資格喪失届を提出する必要があります(健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者資格喪失届については、健康保険組合へ届け出ることになります)。

2.手続き時期・場所および提出方法

特定適用事業所の要件を満たした場合は、事業主が日本年金機構へ提出します。

提出時期

事実発生から5日以内

提出先

事務センターまたは管轄の年金事務所
※同一の法人番号を有するすべての適用事業所を代表する本店または主たる事業所の所在地を管轄する年金事務所

提出方法

郵送、窓口持参

3.届書様式・添付書類

届書様式

添付書類

該当の場合

なし

不該当の場合

特定適用事業所の被保険者(70歳以上被用者、短時間労働者を含む)のうち、4分の3以上の同意を得たことを証する以下の書類

  • 同意対象者(厚生年金保険の被保険者、70歳以上被用者、短時間労働者)の4分の3以上で組織する労働組合の同意がある場合
    当該労働組合の同意書、事業主の証明書
  • 同意対象者の4分の3以上を代表する者の同意がある場合
    当該代表者の同意書、事業主の証明書
  • 同意対象者の4分の3以上の同意がある場合
    同意対象者の同意書

留意事項

以下の事業所は被保険者数にかかわらず、短時間労働者の適用拡大の対象です。

  • 「国に属する事業所」(平成28年10月から)
  • 「地方公共団体に属する事業所」(平成29年4月から)

2.任意特定適用事業所の概要

厚生年金保険の被保険者数が基準に満たない(現在は100人以下、令和6年10月からは50人以下)企業等であっても、被保険者の同意に基づき、短時間労働者の適用拡大の対象事業所になることができます。
なお、申し出により対象事業所となった事業所のことを「任意特定適用事業所」といいます。

手続き

任意特定適用事業所になることを希望する場合は、手続きが必要です。
詳しくは、「任意特定適用事業所申し出・取消申し出の手続き」をご覧ください。

3.短時間労働者の概要

短時間労働者の要件

上記の「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務する方で、1週間の所定労働時間または1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満である方のうち、以下の(1)から(3)のすべてに該当する方が短時間労働者として健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。

(1)週の所定労働時間が20時間以上であること

週の「所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべき時間のことです(雇用保険の取り扱いと同様です)。

「所定労働時間」が週単位で定まっていない場合の算定方法
  • 1カ月単位で定められている場合
    1カ月の所定労働時間を12分の52で除して算定します(※)。
    特定の月の所定労働時間に例外的な長短がある場合は特定の月を除いて算定します。
  • 1年単位で定められている場合
    1年間の所定労働時間を52で除して算定します(※)。
  • 1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合
    その周期における1週間の所定労働時間の平均により算定します。

※1年間の月数を「12」、週数を「52」として週単位の労働時間に換算するものです。

(2)所定内賃金が月額8.8万円以上であること

週給、日給、時間給を月額に換算したものに、各諸手当等を含めた所定内賃金の額が、8.8万円以上である必要があります。
ただし、次に掲げる賃金は除きます。

除外対象
  • 臨時に支払われる賃金および1月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:結婚手当、賞与等)
  • 時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(例:割増賃金等)
  • 最低賃金法で算入しないことを定める賃金(例:精皆勤手当、通勤手当、家族手当

(3)学生でないこと

大学、高等学校、専修学校、各種学校(修業年限が1年以上の課程に限る)等に在学する生徒または学生は適用対象外となります(雇用保険の取り扱いと同様です)。ただし、次に掲げる方は被保険者となります。

対象者
  • 卒業見込証明書を有する方で、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の方
  • 休学中の方
  • 大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の課程の方等

留意事項

短時間労働者の雇用期間の要件について、令和4年10月に「1年以上使用される見込み」から「2カ月を超えて使用される見込み」(通常の被保険者と同様)に改正されました。改正内容の詳細は「適用事業所と被保険者」をご覧ください。

手続き

被保険者資格取得届

  • 短時間労働者に該当する方は、事業主が「被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出する必要があります。詳細は「従業員を採用したとき」をご覧ください。
  • 被保険者資格取得届等の届出の際の「報酬月額」は、短時間労働者も一般の被保険者と同様に、臨時に支払われる賃金以外の時間外手当、精皆勤手当、通勤手当等も含めます。

被保険者区分変更届

4.関連資料

令和6年10月からの適用拡大