介護サービス全事業所、毎年の経営報告義務化へ…厚労省が支援策に活用

厚生労働省は来年度、国内で介護保険サービスを提供する全事業所に、収支や人件費などの経営情報を毎年報告するよう義務づける。集めた情報を、急激な物価高騰などで経営環境が悪化した場合の支援策や、職員の処遇改善策の検討に使う。専用のデータベースを2026年度までに準備し、支援策を講じるための基盤を強化する。

介護サービス全事業所、毎年の経営報告義務化へ…厚労省が支援策に活用

この措置は、今年5月に成立した改正全世代型社会保障制度関連法で決まった。対象は原則、社会福祉法人や自治体、企業などが経営する約31万事業所。中小企業については、業務に支障を来すほどの負担が生じる場合、報告頻度を見直すことも検討する。

収集する情報は、損益計算書や、介護職、事務職など職種別の従事者数、給与額などで、事業者に都道府県を通じて報告してもらう。厚労省は、集めた情報を介護サービスの種類別や事業所の経営規模別に整理し、分析する。内容については、事業者名を特定できない形で公表する。

昨今、新型コロナウイルスの感染拡大や、ロシアのウクライナ侵略に端を発した物価高騰など、介護事業者の経営に打撃を与える事態が立て続けに起きている。

厚労省は現在、3年に1度の介護報酬改定に合わせ、全事業所の経営実態について抽出調査を行い、社会福祉法人が経営する約7万5000事業所からは年1回、情報を収集している。だが、それだけでは業界の状況を把握しきれないため、収集頻度を高めることにした。

整備するデータベースで情報を蓄積し、不測の事態が生じた際にもすみやかに支援策の検討に入ることができるようにする。